大学・大学院教員の高橋です。
今回は私が大学院で指導している授業「プロデュース原論」について触れたいと思います。
本学の大学院は、従来の研究者養成が目的である大学院ではなく、高度な職業人を育成するための専門職大学院です。
そこで目指す職業は『プロデューサー』です。プロデューサーは広範囲な活動に関わるため、学ぶべき知識は非常に多いです。
例えば、コンテンツの契約等の知識からビジネスモデルを作成するための知識、さらには変化が目覚ましいITスキル、またものづくりにおいて欠かすことの出来ないクリエイティビティなどはこのICT、ビジネス、クリエイティビティという三つの輪がはじめて融合してプロデューサーの基盤が形成できるといっていいでしょう。
ですので、プロデューサーになるためのスキルとしての授業は多数あります。
しかしながら、そもそも「プロデュース」という言葉はどういった意味を持つのでしょうか?
通常は動詞もしくは名詞として使われており、和訳するとき的確な日本語が見当たりません。そして映画やテレビ等の映像コンテンツの充実に伴う映像産業への注目度の高まりにより、そこで用いられていた「プロデューサー」と呼ばれる職名が、明確な定義を持たぬまま、英語と同様な用法をもつ言葉として映画以外のさまざまな分野においても普及した現実があります。
そこで本授業では、「プロデュース」とはいったい何なのか?という事を各個人で体得するため、毎回様々な業界で「プロデュース」に携わっている方々をゲストに迎え、各々の視点から解説していく形式をとっています。
この授業は今年からスタートした新科目で必修授業となっており、全員が履修することになります。そのため、私も毎回力が入る授業の一つです。
今回のゲストは、経営コンサルタントとして活動し、著書「プロデュース能力―ビジョンを形にする問題解決の思考と行動」でも注目されている佐々木直彦さん、さらにプロデュースはビジネスだけの場で行われるものではないという私の理論から、ソーシャルプロデュースというカタチで活動し、グッドデザイン賞を2年連続で受賞し、NPOについて著名な『特定非営利活動法人 放課後NPO アフタースクール』代表の平岩国泰さんをお招きし、2回の授業で合計180分の時間を使って、それぞれの「プロデュース」について授業を行いました。
佐々木さんの理論では、プロデュースとは【一つのビジョンのもとに人々の力を借りて「新しい何か」を創りだし、現状を変えること】と定義しています。そして今のこの時代こそプロデュースという手法が企業や各個人においても必要であると熱弁を頂きました。また、平岩さんからはNPOは非営利組織で利益を目的としない団体ではあるが、NPOにおいてもビジネスモデルが必ず必要である。その意味においてプロデュースで一番大事なことはその人間の志だという言葉を頂きました。
お二人の話は私の考えるプロデュース論とほぼ共通していいます。
情熱、教養、志は、自己の内面に関する要素がプロデュースでは必ず必要という考えが私の理論です。プロデュースはありとあらゆる場で必要です。そしてそのような人材を育成していく教育機関こそ本学だという認識を改めて感じる授業でした。