みなさん、こんにちは。講師の小倉イサクです。今回は、シーグラフに関する事を、7つのトピックに分けて報告します。え?!そうなんですか!という話や、毎度お馴染み流浪の某番組の様な感じで読んで欲しい話だったりです。www
1、バンクーバーは寒いけど熱かった!
この夏、一番の猛暑が日本を覆っている中で恐縮ですが、、、、僕は気温が20度前後の都市にやってきました。カナダのバンクーバーです。昨年、冬季オリンピックが開催された都市ですので、皆さんも聞き覚えがあるのでは???さて、今年のSIGGRPHは、初のカナダ開催ですが、真夏なのに、正直、寒いです、、、。上着を3枚着て、毎日過ごしています、、、。
でも、この都市は、VFXの映画産業が熱いんです!世界中で一番と言っていいほど、熱いんです!
なぜかと言いますと、現状、以下のスタジオがこの街にあり
DD,Pixar,SonyImageWorks,MPC,ImageEngine,Zoic,Prime Focus,Nitrogen St,Rainmaker,CIS,
来年は、
R&H,ILM
も、スタジオを新たに開設するからです!世界を代表するハリウッドのスタジオが、こぞって、このバンクーバーにもスタジオを立ち上げる、、、。熱い!熱過ぎるぜ!バンクーバー!!
2、熱いカナダと寒い日本との違い
では、なぜ?こんなにも多くのスタジオがあり、これからも立ち上がるのか?答えは、税金と人材に関係しているのです。
先ずは税金。ここ、バンクーバーではPSTC=Production Service Tax Creditや、DAVE=Digital Animatin or Visual Effectと呼ばれる特別制度があります。簡単に言うと、ある一定額の仕事を発注すると、最大で30〜40%のお金が戻ってくるという、なんともビックリな制度です。ま、いろいろな条件はありますが10万ドルの仕事を発注すると、3万ドル戻ってくるという、、映画の制作側にとっては、ウレシイ制度です。また、人材に関しても違います。世界中に優秀な人材はいますが、こんなに有名スタジオがあり、 比較的ビザも降りやすい国はありません。アメリカは、当然の如く就労ビザがなかなか、降りないので働き始めるのが非常に困難ですが、カナダはそれほどでもありません。手っ取り早く、ワーホリでもとれば、あなたも明日からカナダでCGスタジオへの就職活動が出来る!って、スゴいですよね。
ちなみに、東京はそういう意味では、、、、寒い国の寒い都市です。。。超円高ですし、ランニングコスト(土地代、人件費、光熱費、、)も非常にかかりますし、言葉は日本語だし、、、。これからもガラパゴスになって行くんでしょうね〜。
3、近い将来、実現するかもしれない技術は実現するのかしないのか?ん~、、どっちでもいいか。。。
今年も、Emerging-Technologyの季節がやって参りました。明日にでも、実用化したいさせたい!というよりも、ん?なんに使うこの技術??とついつい、思ってしまうユニークさに期待しつつ、僕の今年のベスト3を紹介します。
第1位:あなたも、女性に大変身!!妊婦さんになれるシミュレーション
第2位:手の甲がインターフェイス!
第3位:お料理の勉強してみません?バーチャルクレープシミュレーター
4、現地で働く、デジハリ卒業生の講演に潜入レポート!「★スクープ★モヒカン頭は実在した!!」
写真、左から2番目の清水サンは、大学時代にデジハリに入学(ダブルスクール)したあと、バンクーバーフィルムスクールというCGの専門学校で1年間勉強し、ヨーロッパで働き始めたそうです。イギリスとドイツで、3年間ほどCM制作に従事し、ロスに渡り映画やTV、ゲームの仕事をして、今はバンクーバーのイメージエンジン社でライティングリードとして働いていらっしゃいます。PIXAR(6回の面接を通った!)やILMからも採用の通知を頂いたほど、優秀な方です。こちらで成功するコツは、「はったりをかます」コトだとか(技術的な裏付けがあるからだとは思いますが、、)。ヨーロッパではジェネラリスト(モデリング~アニメーション~コンポジットをすべて行う)でしたが、今はライティングのスペシャリストです。
それだけでは、報告にならないので、PIXARの話をひとつ。デモリールの中に、非常にクオリティーの高い「花」のCG画像があるんですが、PIXARの面接官は全員、その画像を褒めていてこの話ばかりを求められたそうです。「何か一つ」すっごい物があると、プロには伝わるんですね。
ちなみに、「モヒカン頭」も理由があって、これにすることで、イッパツで人に覚えてもらえるのは武器のひとつらしいので、皆さんも是非この髪型にしてみては?www
5、パンダは闘い、車は走り、カ〜メレオ〜ンは逃げ回る♬♬
カンファレンスでは、主にProduction Settionを見て回りました。当然、この夏に北米で大ヒット中の作品をブレイクダウンしながらの説明です。以前のブログでも紹介しましたが、「カンフーパンダ2」「カーズ2」「ランゴ」「カウボーイ&エイリアン」「アメリカンヒーロー」「トランスフォーマー3」「パイレーツオブカリビアン4」と、、、目白押しでした。
その中で、「ランゴ」を紹介します。
制作スタッフは、「パイレーツオブカリビアンシリーズ」のゴア・ヴァービンスキー監督とILMのCGアーティストの方々。声の主演はジョニーデップ様で日本では10月22日公開!!2007年にThe World'Endの制作が終わってから直ぐに始まったそうです。ILMといえば、実写合成の映画におけるVFX工房ですが、フルCGアニメーションは初の試みです。'08にはアセットとプリプロダクションを開始して'11年に完成したようです。ILMはあの、ジョージルーカスのStarWarsを実現化するプロダクションですから、作品中に登場するキャラクターのデザイン&CG化も非常に、オリジナリティーの溢れたキャラ達です。その中でも、主役のランゴは「目玉」から「手」のポージングまで細部に対しての、きめ細かい設定は圧巻でした。
実は、この夏、デジタルハリウッドでは本学の学生対象に「ランゴ妹役キャラデザインコンテスト」を行っています(応募者全員試写会招待!)。デジハリ生以外の方は、10月の公開を楽しみに待っていて下さいね。ストーリーも、「西部劇」そのもので、ノスタルジックな感じが非常にイケテますよ!
6、エキシビジョン(展示会)は、、規模縮小、、、残念ですが、これが北米の実情です、、。
この7月に、日本でもアメリカの財政危機が話題になり世界経済が、今後どうなるのか?ニュースでも、連日のように報道されていますが、映画・エンタメ業界もその中の一部です。そのため、北米では中堅スタジオが相次いで閉鎖に追い込まれる等、非常に困難な状況です。それを反映するかのように、展示会場も各社の出展ブースが少なく、大きさ自体も小さくなり寂しい限りです。PIXARとデジタルドメインさんが、プロダクションとしては唯一の展示でした、と言えばこの状況が伝わるでしょうか。ちなみに、デジタルドメインさんは今年から来年にかけ、世界7カ所(L.A,サンフランシスコ,バンクーバー,フロリダ,インドのムンバイ,ロンドン.シドニー)にスタジオを開設するらしく、非常に景気が良いようです。
そんな、悲しい話はさておき、全体としては2D(普通の映画)⇒3D(立体視)変換する技術を展示するブースが多かったです。また、3Dスキャナーも値段が下がっているらしく、今後、日本でもこの方法でモデリングする作品が登場するかもしれません。そういった意味で、ZBrushのブースは一番大きく毎回のセッションで立ち見が出るほど賑わっていたのは、印象的でした。それにしても、ホントにハードウェアの展示が少ないのも今後の流れなんでしょうね。
7、来年はロスでやるんロス。
さて、そんなカナダ開催も無事終了し、来年のSIGGRAPH2012は、本拠地のロサンゼルスです。昨年、今年の規模縮小の反動で近年にないほどの大きさで開催されるのでは?との噂です。が、僕の予想は再来年の第40回シーグラフの方が、大開催?な気もします。www
開催期間は例年通り、夏真っ盛りの8月5日〜9日なので、またまた、飛行機代が高い時期ですが貯金をしながら、待ちましょう。学生の方は、是非、在学中に1回は行ってもらいたいです!!
小倉いさく