皆さんこんにちは。講師の小倉イサクです(http://twitter.com/Isaaku)。本日より、私もブログを開始致します。面白くて、タメになる内容を心がけますので是非是非、御一読下さい。よろしくお願いします!
記念すべき最初のブログは、9月9日に行われた映画「プランゼット」~粟津監督によるCGメイキングセミナー~に関しての概要と解説、思う所を述べたいと思います。
http://www.planzet.jp/
映画の概要は、上記URLにあるので読んで頂きたいのですが、ザックリ言うと『フル3DCGを使ったSFムービー』です。粟津監督は、前作の特撮怪獣映画『惑星大怪獣ネガドン』にて、個人制作で約25分の映像を制作し世界中のコンテストにて輝かしい成績を納めました。今回は、倍以上の尺で、登場人物も倍増した事を踏まえ外部のCG会社との協力体制による制作を行ったので非常に内容の濃いものになりました。この点について、監督は「人を束ねる事の大変さと難しさ」を感じたそうです。一方で、SFにあまり興味が無い人との仕事で「自分には無い発想」で制作されたモノを見る楽しさにも感銘を受けたそうなので、良い点、悪い点、様々だったのでしょう。また、監督自身がSF映画が大好きだということで今後の作品も『CGアニメーションによるSFムービー』という分野を確立されていくのだと感じました。
映画の内容以外の目玉企画として、CGディレクターの宮原さんによるMAX(3DCGソフト)と粟津監督によるAfter Effect(合成用ソフト)での実演形式によるメイキングを行いました。来場した学生の皆さんにとって、普段の授業で使用しているソフトが、実際にどのように使われているのかは非常に興味がある所だと思うので、多めに時間を割いて説明をして頂きました。
ポイントを以下にまとめましたので、参考にして下さい。
①MAXによるキャラクタ制作事例
・低コストによる制作のため、バストショット用やフルショット用のモデル違い(ポリゴン数の違い)をせず に制作した(★注1)。ただし、レンダリング時に於けるスムースレベルは変更した。
・顔は口と両目を同心円としたメッシュの配置を心がけ、様々な表情に耐えうる形状にした。
・母音用(あいうえお)のフェイシャルターゲット(★注2)ではなく、「う」「え」だけ制作し、「あい お」は「う」「え」にアゴの変形(ボーンによる)を加える事で対応した。
・効率よく動かせて、且つ形状の破綻が無い事を考えながらモデリングした。つまり、モデリングの作業だが アニメーションの作業も考慮して制作しているという事を常に心がけた。
②After Effectによる合成事例
・カラコレ(★注3)も行うが、3DCGのレンダリングで100%に近いクオリティーまで持っていく事を目標 にV-Ray(★注4)でレンダリングを行った。
・空気感の演出の為、手前と奥に対して「明るさ」「彩度」「ボカシ」「影」「霧」等の修正を行った。
・レイヤー数を可能な限り少なくし(10レイヤー前後)、効率よく作業出来る様に心がけた。
・草花は2D上でアニメーションさせる事で、3DCGアニメーションの負担を軽減した。
★注1:引きのショットと寄りのショットでモデルデータを分ける事によりレンダリング時間を軽減する方法です。
★注2:顔の変化を表現する為には「変化後の形状(フェイシャルターゲット)をモデリング」する必要があります。
★注3:色調補正、明度やガンマカーブによる調整、色相、彩度やコントラスト調整、など最終的な絵作りの為の調整の事を言います。
★注4:レンダリングするためだけのソフトでレンダラーと言います。他にも、PIXAR社(トイストーリーでお馴染み)のRenderMan等もあります。
(全ての内容を観たい方は、以下にUstreamのデータがありますのでご覧下さい)
http://www.ustream.tv/recorded/9448460
というわけで、ハリウッドの大作映画のような新技術紹介ではなく、明日から使えるテクニックを中心に実演形式のセミナーを行って頂きました。通常、60億円以上の制作費をかけて映画を作るのがハリウッドの映画です。そのうちの数億円はCGに対しての対価です。又、「ハリーポッター」「アバター」「アイアンマン」、、、はもっと多くの制作費があり、CGの技術に対しても正当な開発費を投入しているもとの予想できます。一方、日本では映画「20世紀少年」が3作で60億円の制作費だった事を考えると、非力な映像になってしまうと感じざるを得ません。しかも、プランゼットのような映画はもっともっと、安価な制作費ですので正直、太刀打ちできないのは致し方ありません。だからといって、つまらない映画しか作れないかと言えばそうではなく、創意、工夫と発想、熱意で、なんとかしてしまうのが日本人クリエイターのスゴさであり、賞賛に値します。
しかし、いつまでも「気合いと根性」で勝負するのは太平洋戦争と同じです。車産業を中心とした外需では、もうどうしようもない事は火を見るより明らかな御時世なので『海外でも通じるコンテンツ産業』を武器とした外需に切り替えるべく、政府が中心となり施策を行って頂きたいものです。その為の人材を育成する為のデジタルハリウッドの動向もお見逃しなく!と言った感じで初回のブログを締めたいと思います。長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。