こんにちは。講師の小倉イサクです。先日、スタジオジブリの映像部・CG班に所属している三好さん(スクールの卒業生です)をゲストに迎えての授業を大学で行いました!本日は、これの報告です。
皆さん、スタジオジブリ最新作『借りぐらしのアリエッティ』(http://www.karigurashi.jp/index.html)をご覧になりましたか?実は、普通の人には分からない様に、何気な~く3DCGの技術を使っています。そこで、「スケジュール」「制作行程」「技術トピック」「心がけている事」に関して簡単にまとめましたのでご覧下さい。
スケジュール>
2DCG、3DCGのカットは約60カット。これをたったの3人で、昨年9月から今年の5月までで制作した。
メインの作業は、背景処理。レイアウトが出来上がった段階で、CGモデルで壁や床を作成しカメラを動かしてアニメーションさせ、尺を出して、監督からのオッケーをもらい制作に入る。
制作行程>
監督からの確認後、美術さんたちに『背景原図』というものを制作してもらう。背景原図が何かというと、これを使ってパーツごとに分解して、3Dにモデルデータにカメラマップする事(例:階段を上るシーンの背景原図から、左右の壁の、1つ1つのブロックの模様を切り出し、3Dモデルデータに貼っていく)。しかし、背景原図だけではどうにもならない場合は、モーフィングという手法を使って複数の原図をアニメーションさせる。また、キャラクターがライトを持っている場合も注意が必要で、それに合わせて明暗の異なる背景の絵をオーバーラップさせて絵を作る。3DCGが出来上がり後、Softimageでレンダリングをし、After Effectで調整をする。その後、撮影班(合成する部署)にデータを送って終了。
技術トピック>
背景原図などの手描き素材は、スキャナーではなく通常のカメラを使ってデジタイズする。これにより、空気感やノイズなどのアナログ的な雰囲気が出せる。
レンダリングするサイズは、1.2倍程度の大きさ。これによりカメラの揺れに対応出来る。
モーフィングに使うのが、elastic reality(http://www.youtube.com/watch?v=i1_e723fgJY)というソフトで、現状、スタジオジブリさんしか使用していないソフト。
素材を作る際に心がけている事>
使用目的を明確にする。
手描きでは出来ない表現を目指す。
作品の世界観を守る。
スタジオジブリさんが3DCGを初めて使ったのが「もののけ姫」(1997)です。それから10年以上が経過し、CGの技術が向上したのは言うまでもありません。しかし、変わらぬ考えがあるのではないでしょうか?それは、「CGをCGと感じさせない表現手法」です。ハリウッドの大作映画が、実写とCGの区別がつかないほどのクオリティーを発揮して久しいですが、ジブリさんもアニメの中に3DCGを使っても、それをCGと感じさせません。まさに、『作品の世界観を守る』につきるのでは?皆さんも作り手として是非、見習って欲しいですし、教える側もこの事を、念頭に置いて教壇に立ちたいものです。
最後に、ミッチャン(三好さん)ありがとう~。今度、また、ジブリに遊びに行きます!
イサク